お屠蘇(おとそ)とは?意外と知らない意味や歴史、飲み方を紹介
「お屠蘇にはどんな意味があるの?」「お屠蘇の作り方が知りたい」
日本のお正月はお屠蘇を飲むご家庭も多いかと思いますが、お屠蘇の意味や由来については知らないという方もいるのではないでしょうか。
お屠蘇の意味や由来、作法などを知ることでよりお屠蘇を楽しめるようになります。
こちらの記事ではお屠蘇の歴史や意味、由来、飲むときの作法、地域による違いについて解説しています。お屠蘇の作り方についても紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
Contents
お屠蘇(おとそ)とは?正月に飲む縁起のいいお酒
お屠蘇(おとそ)とは、無病長寿を願い正月に飲むお酒です。
「屠蘇散(とそさん)」などとよばれる5〜10種類の生薬を日本酒に漬け込んで造られています。
日本では正月にお屠蘇を飲むのが伝統ですが、地域によってはお屠蘇の代わりに日本酒を用いることもあります。
お屠蘇(おとそ)の中身は何?日本酒やみりん、生薬
お屠蘇(おとそ)は生薬を日本酒やみりんに漬け込んで作られる薬草酒です。お屠蘇に使う生薬は「屠蘇散(とそさん)」「屠蘇延命散(とそえんめいさん)」とよばれ、その中身は主に以下があります。
説明 | 作用 | |
---|---|---|
山椒(サンショウ) | サンショウの実 | 胃を丈夫にして腸の働きを整える |
陳皮(チンピ) | みかんの皮 | 胃腸の働きを整え、食欲不振やお腹の張り改善が期待できる |
肉桂(ニッケイ) または桂皮(ケイヒ) |
ニッケイ属の樹皮(シナモンともいう) | 鎮痛作用を持ち、関節痛や月経不順などの改善が期待できる |
桔梗(キキョウ) | キキョウの根 | 鎮咳作用、去痰作用,排膿作用があり咳や痰を抑制する |
八角(ハッカク) | トウシキミの果実 | 身体を温め、冷え性や食欲不振などの改善が期待できる |
白朮(ビャクジュツ) | キク科オケラ またはオオバナオケラの根 |
胃腸の機能低下を補い、気を整える |
防風(ボウフウ) | セリ科ボウフウの根 | 解熱作用や血圧降下作用、抗ウイルス作用などが期待できる |
このように、お屠蘇には体にいい作用を持つ素材が使われています。
お屠蘇(おとそ)の歴史
お屠蘇(おとそ)の始まりは、元々は中国の三国時代に遡ります。災難・厄除けのため、医師が生薬を調合しお酒に漬け込んで飲んだことが始まりとされます。その後、平安時代に日本へ伝わりました。
お屠蘇は当初、平安貴族の正月行事として取り入れられたものでした。しかし、一般庶民までその行事が広まり、江戸時代には多くの人が正月行事としてお屠蘇を飲むようになったと言われています。
お屠蘇(おとそ)の意味と由来
古代中国において「蘇」は悪魔のことを指し、「屠」は邪気を払うという意味の「屠る(ほふる)」を指します。このことから「邪気を屠り、魂を蘇らせる」というのがお屠蘇の由来のひとつです。
また、お屠蘇は「年の初めにこれを服するときは年中の厄災を避け、福寿を招く」と伝えられています。
一方で、「正気を蘇生させる」という意味がお屠蘇の由来とも言われており、その意味と由来には諸説あります。
お屠蘇の中身は地域によって異なる?九州は地酒を使用することも
お屠蘇の中身は地域により異なります。
関西地方では、日本酒にみりんや生薬(屠蘇散)を合わせたお酒をお屠蘇とよぶのが一般的です。一方で、関東より北の地域では、屠蘇散などを使用せず日本酒のことをそのままお屠蘇とよぶことは少なくありません。
また、地域によってはその土地ならではの地酒を使うこともあり、熊本では赤酒、鹿児島では黒酒を使って屠蘇散を漬け込み、お屠蘇を作ることもあります。
関西では正式なお屠蘇が飲まれているのは、かつて京都の平安京で行われていた宮中行事からお屠蘇が広まったのが理由かもしれません。
そのほか、お屠蘇に使用する生薬の種類や量、配合などの違いも地域による違いのひとつです。そのため、お屠蘇の飲み方に正解はないと言えます。
お屠蘇(おとそ)の正しい飲み方は?覚えておくべき4つの作法
お屠蘇はほかのお酒とは違って飲むときの作法があります。主な作法は次の4つです。
- 元旦に飲む
- お屠蘇専用の盃を使用する
- 三段重ねの盃で3回に分けて飲む
- 年少者から年長者へ順番に盃をすすめる
ここからは、それぞれの作法について解説します。
作法①元旦に飲む
お屠蘇は三が日ではなく、元旦に飲むのが正しいとされています。元旦とは元日の朝のことです。
お屠蘇を作るのには時間がかかるため、大晦日のうちに屠蘇散を漬け込み、元旦に屠蘇散を引き取って飲みます。
また、お屠蘇を飲むタイミングにも作法があります。
お屠蘇を飲む前には「若水」という元旦に汲んできたその年の最初の水で手を清めたり、神棚や仏壇を拝んだり、家族に新年の挨拶するのが作法です。
その後、おせちなどを食べる前にお屠蘇を飲みます。
作法②お屠蘇専用の盃を使用する
お屠蘇専用の盃を使用するのも作法のひとつです。
お屠蘇には「屠蘇器(とそき)」という専用の道具があり、以下の5つから成ります。
- 屠蘇台(とそだい):盃台や銚子、盃などを乗せる台
- 盃台(さかずきだい):重ねた盃を乗せる道具
- 盃(さかずき):屠蘇を注ぐ道具
- 銚子(ちょうし):屠蘇を入れる道具
- 銚子飾り(ちょうしかざり):銚子を飾る水引
また、屠蘇器は「朱塗」「黒塗」「溜塗」の3種類の塗色があります。朱色は最も高貴な色とされるため朱塗を使用するのが縁起いいとされますが、好みに合わせて使用して問題ありません。
ご家庭に屠蘇器がない場合は、ぜひお屠蘇セットを購入して試してみてください。
作法③三段重ねの盃で3回に分けて飲む
お屠蘇は三段重ねの盃を使用し、3回に分けて飲むのが作法です。厳密には三段重ねの盃に加え、漆や錫、白銀などの銚子も使用します。
屠蘇器がない場合はひとつの盃に3回に分けて注ぎ、3回に分けて飲んでも構いません。
作法④年少者から年長者へ順番に盃をすすめる
お屠蘇は、年少者から年長者へ順番に盃をすすめるのも作法の一つです。
これは、若人の生気を年長者へ渡すという意味があります。
一家揃って東の方角を向き、年少者から順番に「一人これを飲めば一家苦しみなく、一家これを飲めば一里病なし」と唱えて飲みます。また、厄年の人がいる場合は、最後に飲むのがしきたりです。
お屠蘇(おとそ)の作法は地域で異なる
お屠蘇の作法は地域で異なることがあります。
通常、年少者から年長者の順番で飲みすすめるのが基本的な作法です。しかし、地域や家庭によっては年長者から先に飲むケースもあります。
これは、年長者の英知を若人に与えるという意味です。
また、三段重ねの盃を3回に分けて飲むのが作法ですが、三段重ねの盃のうち父親が大、母親が中、子どもが小と使い分けることもあります。
お屠蘇の飲み方に正解はないので、飲み方の作法はひとつの目安として考えるといいでしょう。
未成年でもお屠蘇を飲んでいい?
お屠蘇はアルコールなので、未成年や運転手は飲んではいけません。
お正月気分を味わうためには、子ども用にアルコールを飛ばしたみりんを作り、ノンアルコールで楽しむのがおすすめです。
また、お屠蘇を注いだ盃を傾けて口をつけるなど、飲んだふりをするだけでも結構です。
お屠蘇気分とはどういう意味?
お屠蘇気分とは、正月のうきうきした気分を表す言葉です。または、正月が過ぎた後もうきうきの気持ちが切り替わらない状態を表します。
かつて、江戸時代に商人の家でも主人から下働きの少年(丁稚や小僧)まで集まって、お屠蘇を飲む祝い事が広まったことから、「お屠蘇気分」という言葉が生まれたと言います。
お屠蘇の作り方
お屠蘇はご家庭でも簡単に作ることができます。お屠蘇の作り方は次のとおりです。
【材料】
- 日本酒
- 本みりん
- 屠蘇散
【作り方】
- 酒とみりんを合わせる
- 合わせた酒300mlあたり屠蘇散を一包入れる
- 5〜8時間漬け込む
お屠蘇に使用するみりんは塩分などが入っていない本みりんを使用します。屠蘇散は生薬のことで、酒屋やスーパー、ドラッグストアなどでも購入できるので、生薬の中身を確認して好みの商品を選びましょう。
また、酒とみりんは計300mlになるよう合わせます。日本酒が多ければ辛口、みりんが多ければ甘口のお屠蘇に仕上がります。
屠蘇散を漬け込みすぎると濁りや沈でん物が発生するため、漬け込み時間は5〜8時間を目安に様子を見ながら時間を調整するのがポイントです。
お屠蘇(おとそ)におすすめの日本酒「神聖 大吟醸」
味わい | 淡麗辛口 |
原材料 | 米(国産) 米麹(国産米) 醸造アルコール |
アルコール | 15〜16度 |
精米歩合 | 50% |
価格 | 1,800ml:3,520円(税込) 720ml:1,760円(税込) |
※価格は2024年9月のものです
お屠蘇は、ベースとなる日本酒やみりんの品質によって味わいが変化します。お屠蘇作りに山本本家がおすすめする日本酒が「神聖 大吟醸」です。大吟醸ならではのキレとコクのある味わいで、お屠蘇のベースにも最適の一本です。
まとめ
お屠蘇は無病長寿を願い、正月に飲む縁起のいいお酒です。
元旦(元日の朝)に飲むのが一般的で、お屠蘇専用の盃を使用するなどの作法がありますが、地域や家庭によって飲み方は異なります。
お正月をより楽しむため、ぜひ今年のお正月は正式な作法でお屠蘇を飲んでみてはいかがでしょうか。